2020年に3・4年生の外国語活動と5・6年生の外国語科が本格的にスタートしました。同じく2020年、学習指導要領が改訂され「言語活動」が最重要視されるようになりました。「言語活動」自体は新しい言葉ではありませんが、従来の学習指導要領に比べて更に明確化されたと言えます。
みなさんは言語活動がどういったものか、ご存じでしょうか? 意識して授業することはできているでしょうか?
言語活動は、英語授業の中でもとても有効な学習アプローチです。言語活動ってなんだけ? 忘れてしまった......という方のために、今回は言語活動について簡単におさらいします。学習指導要領などを読むのが苦手な方は、ピンクの箇所を飛ばして合間の説明だけ読んでいっても大丈夫です! では、さっそく見ていきましょう。
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言語活動は「自分の考えや気持ちを伝えること」
はじめに結論を言ってしまうと、言語活動とは「自分の考えや気持ちを伝える」活動のことです。「小学校外国語活動・外国語 研修ガイドブック」(2017年 文部科学省)には、言語活動について次のように書かれています。
言語活動について
・「実際に英語を使用して互いの考えや気持ちを伝え合う」活動
・「情報を整理しながら考えなどを形成するといった『思考力、判断力、表現力等』が活用されると同時に、英語に関する『知識及び技能』が活用される」
歌やチャンツを歌ったり機械的に読む練習をしたりといった活動は、必要な活動かもしれませんが単なる「練習」であり言語活動とは言えません。言語活動は、子どもたちがすすんでコミュニケーションをとりたいという意思のもと、自分の考えや言いたいことを伝えたり、相手の言っていることを聞こうとしたりする活動のことです。
言語活動は対話のみ?
では、言語活動は「対話」のみでの活動なのでしょうか? 答えはNOです。音声(聞く・話す)だけではなく、文字(読む・書く)による活動も言語活動です。例えば自分の気持ちや思いをのせて、誰かに手紙やカードを書いて交換したり、自己紹介ポスターを作成したりするなどの「読む」の活動が考えられます。
特に小学校5・6年生は、「聞くこと、読むこと、話すこと、書くことの言語活動を通して」コミュニケーションを図っていくことになります。つまり、4技能を使って様々なアプローチをすることが可能です。
ただし小学校3・4年生は、読み書きの指導が含まれていないので「聞くこと、話すことの言語活動を通して」コミュニケーションを図ることになります。
学習指導要領の「外国語活動・外国語科の目標」
1. 外国語活動(小学校3・4年生)
外国語によりコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ、外国語による聞くこと、話すことの言語活動を通して、コミュニケーションを図る素地となる資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
2. 小学校外国語科(小学校5・6年生)
外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ、外国語による聞くこと、読むこと、話すこと、書くことの言語活動を通して、コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
「言語活動」と「練習」を区別する
ただし、繰り返しになりますが、言語材料を理解するための「練習」は言語活動ではありませんので、そういった活動とはしっかり区別しなくてはいけません。授業の大半が「練習」ばかりになることは避け、「言語活動」を中心とした授業作りを心掛けていく必要があります。
ですので、授業の中では、先生自身も「自分の考えや気持ちを伝える」よう意識していきましょう。先生と子どもたちが、英語でもお互いの気持ちを伝え合える授業、クラス作りが大切です。
例えば、授業の挨拶で先生が"How are you?"と子どもたちに聞き、ある子が"I'm sleepy." と言ったとします。さて、先生はどう答えるのがよいでしょう? 機械的に"Ok." と答えるだけではだめですね。どうしたの? 何時に寝たの? 体調が悪いの? のように、コミュニケーションを自然に発展させていきましょう。
I'm sleepy.
Oh, you're sleepy.
Are you OK?
What time did you go to bed last night?
ジェスチャーを加えながら話すことで、子どもたちに伝わりやすくなります。できるだけ英語とジェスチャーだけで理解できるように促します。
言語活動で先生が意識することは?
では「言語活動」を行うにあたり、先生はどんなことを意識すればよでしょうか? 「小学校外国語活動・外国語 研修ガイドブック」の内容を深堀していきます。
1. 目的、場面、状況を設定
コミュニケーションを行う目的、場面、状況などを明確に設定しましょう。言語活動をする際には、「どうしてこの活動をするのか」「どんな場面で使う表現なのか」を子どもたちにしっかり伝えることが大切です。
例えば「新しいALTの先生に自分のことを知ってもらおう」などの目的を伝え、「話したい」「○○はどうやって言うのかな」という意欲や関心を引き出します。この例のようにその目的、場面、状況が本物(オーセンティック)だとさらによいでしょう。やりとりに必然性があると、子どもたちのモチベーションをより高めることができます。
また、大切なのは相手意識です。どんな相手なのか、その相手にどんなことをどんなふうに伝えればよいか、どんな質問を混ぜることができるのか、子どもたちが自ら思考することが大切です。
2. 簡単な語句を使う
簡単な語句や基本的な表現を使いましょう。新規表現や単語を使うことばかりを重視したり、ちょっとした発音や文法の間違いを気にして指摘したりするのはNGです。知っている単語や文法の中から、またはジェスチャーを使って、お互いの伝えたい気持ちや意欲を大切にして、コミュニケーションを楽しむことが大切です。
3.子どもたちの「好き」を知る
言語活動で扱う題材は、子どもたちの興味・関心のあるものにしましょう。子どもたちが日ごろから目にしているものや、好きなもの、本、動物など、身の回りのものから題材を設定します。他教科等で学習したものや学校行事で扱う内容と関連付けるのもよいでしょう。
自分が好きなものを相手に伝える楽しさや伝わる嬉しさ、また相手の好きなものを知る喜びは、とても大きいものです。先生自身がこのコミュニケーションの楽しさや意義をしっかり理解していなければなりません。
母語を習得させるように言語活動を
赤ちゃんが母語を習得していくように、言葉の習得には時間がかかります。トライ&エラーを繰り返しながら、徐々に言語が身に付いていきます。そうした中でも「自分の考えや気持ちを伝えたい」という意欲は、言語を獲得するいわばガソリンのようなものです。
授業でそのガソリンに火をつけるのは先生方です。英語の授業の中に「言語活動」を位置付けられているか、適切に題材を選べているか、今一度振り返ってみてください。
また、その題材は相手意識がもてる内容か、必然性はあるか、本物の題材であるか、コミュニケーションの楽しさや意義を見出せるものか、今一度確認してみるといいかもしれませんね。