Scaffolding(スキャフォールディング)という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 聞いたことないという先生がほとんどでしょう。しかし、Scaffoldingは英語を教える先生にとってはとても大事な考え方です。この記事を読めば、英語の授業にすぐに生かせる学習支援の方法を知ることができます。ぜひ参考にしてください。
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Scaffolding(足場かけ)とは?
Scaffoldingとは、日本語では「足場かけ・はしごかけ」と呼ばれるメソッドです。足場とは、高いところで作業するために、丸太や鋼管で組み立てたものですよね。高い場所に登るためには、正しい組み方でしっかりした土台を作らなければなりません。教育ではこの足場かけが、とても重要と言われています。この足場がなければ、作業員は登ることができません。
この作業員が子どもたち、足場を組む人が先生たちです。
より具体的な例をあげてみましょう。泳いだことのない子どもを泳げるようにしたいとします。最終目標(一番高い目標)は、海で泳ぐことです。あなたなら、どうしますか?
最初からその子を海に放り投げる先生はいないはずです。まず、小さなプールから練習させる先生がほとんどでしょう。それから、泳ぐ型を学ばせたり、手本を見せながら一緒に泳いで練習したりすることも考えられます。浮き輪やビート板も必要でしょう。励まし合える友達もいるといいですね。
この小さなプール、型、手本、浮き輪、ビート板、友達など、こういった環境や方法、教具などによる学習支援をScaffoldingと呼んでいます。
参考: オースベルという心理学者が初めてScaffolding という概念を学習に初めて用いました。さらにその後、ヴィゴツキーの「発達の最近接領域」概念と関連させその概念が発展していき、現在はScaffoldingについて複数の定義がされています。1
英語学習に必要なScaffolding
では、英語の先生として、子どもたちが英語を十分に話せるようになるまでに、教室内でできるScaffoldingはどんなものが考えられるでしょうか? いくつ思いつくでしょうか?
例をあげてみましょう。
英語学習(第二言語習得)に必要なScaffolding
・Visuals 視覚的なもの
・Realia 具体物
・Gestures ジェスチャー
・Modeling 手本
・Sentence Frames 話型
・Repetition 繰り返し
・Check for Understanding 理解度の把握
・First Language 第一言語
・Praise and Encouragement ほめる、励ます
・Pair and Group Work ペア、グループワーク
まずは、日ごろの授業で常に意識して提示できるものを挙げてみます。Visualsは、視覚的なもの。文字の意味を指す写真やイラストを示します。ピクチャーカードがその例です。Realiaは具体物、実物のもの。Visualsに似ていますが、こちらは本物を指します。Gesturesは、伝わりにくい言葉を身振り手振りを加えて話すことです。Modelingでは、タスクを与える前に、必ずお手本を見せます。Sentence Framesは話型のことです。まずは話型を与えて練習をさせます。(例)I like _______ . Do you like _______ ?
次に方法です。Repetitionは、何度も何度も手本を見せたり、何度も実践を積んだりと、繰り返し指導を行うことです。Check for Understandingは、子どもがどれだけ理解をしているか把握をすること。適宜評価などをし、指導の内容に修正をかける必要があります。First Languageは第一言語。必要があれば、その子の母国語で説明を加えます。Praise and Encouragementは、達成できたタスクについて褒めたり、さらに上の目標に向かえるよう励ましたりすることです。
最後に場や環境の設定です。Pair and Group Workはペア、グループワークのこと。実践の場として最適です。ALTなどのネイティブスピーカーとの会話ができる場があればさらによいでしょう。
もちろんこの他にもさまざまなScaffolingsが考えられますが、今回は教室内でできる基本的なもののみ紹介しました。
安心して学習ができる足場を作ってあげよう
子どもが学習でつまずいてしまった時や行き詰ってしまった時は、もしかしたらScaffoldingが不十分なのかもしれません。十分に視覚的支援はされているでしょうか? ジェスチャーをつけて指示することができているでしょうか? 手本や話型はわかりやすいでしょうか? 子どもがどれだけ理解しているか把握できているでしょうか? 実践の場は確保できていますか?
子どもたちが安心して、目標に向かって一歩一歩確実に前に進めるようなしっかりとした足場を作ってあげられるといいですね。