オーセンティック(Authentic)という言葉をご存知でしょうか? オーセンティックな学習(Authentic Leaning)やオーセンティック教材(Authentic Materials)のように使われる単語ですが、近年、教育現場でよく聞かれるようになりました。
「オーセンティックな学習」は、近年子どもたちが主体的に、意欲的に学習をすることができるアプローチとしてとても注目されています。では、実際にオーセンティックな学習とはどんな学習なのでしょうか? さっそく見ていきましょう!
実生活に即した「オーセンティックな学習」
オーセンティックとは本来、「真正な」や「本物の」という意味を表す単語です。教育分野では1980年代のアメリカで広まったと言われています。実は日本では「オーセンティックな学習」にまだ明確な定義はなく、多義的に使われているようです。その中でも、よく使われている2つの学習アプローチをまとめました。
オーセンティック教材を活用した学習
1つ目は、オーセンティックな教材を使用した学習のことです。オーセンティック教材とは、言語教育目的のために作られたのではない、実生活に存在する音声や本、映像などのことを指します。英語教育の場合は、ネイティブスピーカーが実生活で使っているものや見ているものがそれに当てはまるでしょう。
具体的な状況や文脈を含んだ学習
2つ目は、具体的な状況や文脈を含んだ学習(Sistuated Leaning)です。つまり、現実世界との結びつきを考えた実践的で有用性のある学習のこと。実生活の中にある課題を中心に、主に児童主体として学習が進められ、自分自身で考え、探求し、また友達と対話しながら学習していきます。
文部科学省では「深い学び」の英訳にAuthentic Learning(オーセンティック・ラーニング)という言葉をあてています。「深い学び」と聞けば、イメージをしやすい先生が多いかもしれませんね。
英語授業の中での「オーセンティックな学習」具体例
では英語の授業の中での、オーセンティックな学習とはどんなものがあるのでしょう? 例を挙げながら考えてみましょう。まずは、オーセンティック教材を使った例です。
絵本
簡単にでき、また子どもたちにも人気なオーセンティック教材といえば、やはり絵本です。英語を母語とする子どもたちに向けて英語で書かれた絵本の中で、日本語にも翻訳されベストセラーにっている絵本は、やはり愛され続ける理由があります。イラストが可愛いのはもちろん、ストーリーや文章のリズムが面白く自然と声に出して読んでみたくなったり、言葉の意味を知りたくなったりす。子どもたちの英語への興味を引き出します。
また、絵本に関連する単語を学習したり、役になりきってロールプレイをしたり、話の続きを考えたり、他にもさまざまな活動や遊びをしすることで、さらに学習を深めることができます。
チャンツ・歌
次に紹介するオーセンティック教材は、歌です。流行りの歌などは、子どもたちの知的好奇心をくすぐり、またチャンツやマザー・グースなどの昔からある伝承歌は、言葉の言い回しやリズムがとても頭に残りやすく、発語練習の助けともなります。なかなか覚えられない曜日や、月の言い方なども、歌なら覚えられる子がいるということは先生方も身をもって体験していることでしょう。
最後に、具体的な状況や文脈を含んだ学習の例を紹介します。
実践的学習・疑似体験学習
英語の学習においては、もっともオーセンティックな学習は英語を使って実際にネイティブスピーカーと話すこと、また英語を使って実用的な学習をすることでしょう。
ポイントは、決まったフレーズの反復練習や話型にはめただけの会話ではなく、自然な会話をするということです。海外に留学したり、また留学生を受け入れたり、ALTの先生や外国の方との交流の場を設けたりし、英語での会話の実践を積み重ねていくことができれば、本物の英語を活用する力はついていくでしょう。でも、普段の授業でそう簡単にできることではありません。
そこでおすすめしたいのが、疑似体験学習です。「○○になりきろう」「○○ごっこをしよう」「○○のつもりでやろう」など、実際に生活の中で実践しているつもりで、教室の中で疑似体験することは可能です。子どもたちは、こういった学習が大好きです。先生は具体的な文脈や状況を設定するとよいでしょう。少し例を挙げます。
他にも、子どもたちの発達段階や興味、関心にあわせた様々な活動が考えられます。
楽しく、深い学びを得られる授業を
学びの文脈をオーセンティックにすることで、子どもたちは主体的に楽しく学び、また仲間と対話しながら深い学びを得ることができます。またオーセンティックな学習は、実際にどのように社会と関わり、よりよい生活を送ることができるかどうかを考える土台ともなる学習です。
子どもたちの目がきらきら輝くようなオーセンティックな学習を取り入れていけるといいですね!