中・高英語科教員になりたいけどどれくらいの英語力が必要なの? 小学校英語専科教員でも英語力は必要なの? などの疑問をもっている方がいらっしゃるかと思います。今回は、政府の見解を交えながら、中・高英語科教員に求められる英語力や、小学校英語専科教員にとって英語力より大切なことをお伝えしたいと思います。
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中・高英語科教員に求められる英語力
中・高英語科教員に求められているのは英検準1級レベル
文部科学省は、中・高の英語科教員の英語力の目標として「CEFR B2レベル(英検準1を級以上、あるいはTOEFL iBT 80点以上もしくはTOEIC730点以上)」を基本的な指標として示しています。必ず英語力を証明するものが必要というわけではありませんが、それ相応の英語力が求められているのは事実です。その理由を資料をもとに解説します。
中・高生に求める英語力のレベルも上がっている
令和5年(2023)年に、5年先までを見据えた教育政策方針である「第4期教育振興基本計画1」を、政府は閣議決定しました。そこでは、「持続可能な社会の創り手を育成」「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」の2つのコンセプトを掲げ、それをもとに16の目標と基本施策を示しています。
その中の「目標4」である「グローバル社会における人材育成」には、①日本人の学生・生徒の海外留学の推進 ②外国語教育の充実 ③高等学校・高等専門学校・大学等の国際化 の3つの基本施策が掲げられています。
さらに中学校卒業段階、高校卒業段階での英語力の指標もこのように書かれています。
子どもたちの英語力目標
・中学校卒業段階 CEFR A1レベル(英検3級相当)60%
・高校卒業段階 CEFR A2レベル(英検準2級相当)60%
CEFR B1レベル(英検2級相当)30%
中学校卒業段階、高校卒業段階ともに第4期教育振興基本計画に比べると、50%から60%へと割合が増加し、また英検2級相当レベルについても新しい目標として設けられました。英語教育にさらに力を入れていることがわかりますね。
実際に、子どもたちの英語力は年々、上がってきていると言われています。
つまり、指導者側の英語力が以前に増して必要不可欠ということになります。
では、小学校英語専科教員の場合はどうでしょう?
小学校英語専科教員に求められている英語力
小学校では「全科」教員免許で英語を教えられる
前提として、小学校で英語を教える場合には特別な資格は必要ありません。小学校(全科)の教員免許をもっていれば誰でも英語を教えることができます(中・高の英語科免許状のみで教えられる場合もあります)。
また、政府は小学校英語専科指導加配(小学校英語専科教員)の採用も進めています。2020年の外国語科が義務化・教科化をされたことをきっかけに、担任を外れて英語を教える英語専科教員という立場もできました。
小学校英語専科教員に求められているのも英検準1級レベル
小学校英語専科指導加配の条件は、以下の通りです。
1. 中学校又は 高等学校教諭の英語教員免許状を有する者
2. 2年以上の外国語指導助手(ALT)の経験者
3. CEFR B2レベル(英検準1級)相当以上の英語力を有する者
4. 海外大学、又は青年海外協力隊若しくは在外教育施設等で、2年以上英語を使用した海外留学・勤務経験のある者
たくさん条件が並べられていますが、中・高の英語教員免許状をもっている、または、中・高の英語科教員と同レベルであるCEFR B2レベル(英検準1級)相当以上の英語力が求められているようです。こちらも、必ず必要というわけではないようです。(ちなみに上記の2~4にあっては、 小学校教諭免許状、又は中学校・高等学校教諭の英語教員免許状 を有する必要があります)。
実際、文部省の2019年の調査によると、英検準1級または1級を所持している小学校教員の数は全国で4000人弱、すなわち全体の1%ほどしかまだいないということです(臨時的任用教員や時間講師などの先生を除く)。
ただし、中学校・高校の英語ほどの指導技術は必要ないとはいえ、常に英語力の向上を意識しなければならないということはいうまでもありません。小学校英語教員は、子どもたちの英語力の基盤を気付く、大事な役目を担っているからです。
小学校英語専科教員にとって英語力よりもっと大切な能力
しかし、英語力が足りなくても、英語を上手に教える小学校の先生はたくさんいますね。そんな先生の共通点からわかる、英語専科教員として英語力よりも大事なこともいくつか挙げていきます。
「英語が好き」を伝えられる
小学校英語専科教員は「英語が好き」を子どもたちに伝えられるとよいでしょう。機械的で反復練習ばかりでの授業では、英語嫌いの子をつくりかねません。小学校で英語嫌いになると、その後どのように影響するか、想像がつきますね。小学校では「英語が楽しい!」「英語が好き」と思えることが重要です。
あなたが英語を好きになったきっかけはなんですか? 洋画、洋楽、旅行、ファッション。どんなことでもいいです。ぜひその「好き」を子どもたちにその経験を共有して、英語への興味を引き出しましょう。
間違いをおそれず英語でのコミュニケーションを楽しめる
子どもたちにとって、先生はロールモデルです。流暢な英語を話せれば、それに越したことはないですが、実際にそんな先生はほんの一握りでしょう。日本人は、完璧な文法や発音を求めて英語を話すことを躊躇している人が多い、ということが研究からもわかっています。でも、それでは英語力は伸びないですよね。そんなモデルを子どもたちに示すわけにはいきません。
また、世界的に見てもさまざまな話者がいて、さまざまな英語の発音があるという事実も知っておかなければなりません。むしろ、世界には第二言語として英語を話している人が多いはずです。その中で、完璧を求めて話す機会を逃していてはもったいないですね。間違いを恐れずにコミュニケーションを楽しむ姿を子どもたちに見せていきましょう。
積極的に異文化に触れることができる
ぜひ、海外へと出かけてみましょう。気楽に旅行でもいいですし、長期休みを利用して短期留学などもおすすめです。その国の文化や思想などは、実際に体験しないとわからないものも多くあります。またそういった経験は、先生の財産となり自信にも繋がります。
日本にいても、類似経験をすることは可能です。国際交流会や国際イベント、ボランティア活動など、外国出身の方とコミュニケーションをとれる場所に行ってみましょう。テキストだけの学習ではわからないことを、たくさん学ぶことができるでしょう。
自身が英語を楽しめる先生になろう!
中・高英語科教員と小学校英語専科教員に求められる英語力や、英語力より大切なことをお伝えしました。中・高の英語科教員も、小学校の英語専科教員も準1級レベルの英語力が求められていることがわかりましたね。英語に限らず、教員になってからも専門分野の研究を深めていくことは必要不可欠なことです。
まだ準1級レベルの英語力がない先生も、さらに上のレベルを目指している先生も、これを機にぜひ頑張って英語力の向上を目指してくださいね。
また、英語力以外にも大切な能力として3つ挙げました。これは、中学校・高校の英語科の先生にも同じことが言えます。積極的に異文化に触れる体験をしたり、外国の方と英語で積極的にコミュニケーションをとったりするなど、ぜひ自分自身が英語を楽しめる先生になってくださいね。