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小学校の英語、変わる9つのこと|次期学習指導要領の審議まとめ

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この記事の元になった資料

4線のプリントを配ると、「どこから書くの?」と書き出す前に手が止まる子と、「もう終わった」と手持ちぶさたになる子。そんな場面は、どの学校にもあるのではないでしょうか。

その差は、国の資料にも数字で出ています。一文を書き写す問題の正答率には、学校間で約30〜90%の差。小学校の課題として並べられた「書くこと」に、例として添えられている数字です。

もっとも、課題ばかりが並んでいるわけではありません。小学生への質問調査では、英語を学ぶ意欲は全学年で8割以上。中学生への質問調査でも、「小学校での英語の授業が役に立った」と答える割合が、いまの学習指導要領になる前と比べて上がっています。4技能すべてで相当数の児童が通過した問題も多く、3・4年の外国語活動から音声に慣れ親しんできた積み重ねが一定程度あらわれている、という評価です。

聞く相当数が通過話す相当数が通過読む課題(興味・理解)書く課題(正答率の差)通過=R4 学習指導要領実施状況調査/興味・理解=教師オンライン質問調査
4技能すべてで相当数の児童が通過した問題が多い一方、課題として挙がったのは「書くこと」と「読むこと」(資料 p.3・p.22)。

2026年10月5日、中央教育審議会が次期学習指導要領に向けた「審議まとめ」を公表しました。

「変わるのは聞いたけれど、結局うちのクラスの何が変わるの?」

この審議まとめと、文部科学省 教育課程部会の「外国語ワーキンググループ 取りまとめ(案)※会議後修正」(2026年8月4日)を読み解いていきます。資料が挙げる改善の方向性は11項目。高校の科目名に関する1項目をのぞけば、残る10項目はすべて小学校にも関わります。内容の重なる2つをまとめて、9つの変化としてお伝えします。

1.「何のために外国語を学ぶのか」を定義し直す

翻訳アプリに話しかける子どもを見ながら、この子たちが大人になるころ、英語はまだ必要なのだろうか——そう考えたことはないでしょうか。

資料も、まさにそこから始まります。AIの飛躍的な発展により手軽に高精度の翻訳が可能になる中、AIの活用が当たり前となる社会を前提として、外国語を学ぶ本質的意義を再定義する必要がある。これが、課題欄の最初に置かれた項目です。英語が「好き」な児童生徒や、将来英語を使いたいと考える生徒の割合が減っているという指摘も、あわせて記されています。

数字でも出ています。英語を学ぶ意欲は、学年が上がるごとに下がる傾向にある。中学1年生が英語を好きではない理由の上位は、「文法が難しい」「単語のつづりや文字を覚えるのが難しい」「英語の文を書くのが難しい」でした。

では、どう定義し直すのか。挙げられている観点は2つです。ひとつは、異なる言語・文化への理解や、母語・自国の文化のメタ認知を促す「言葉、文化、コミュニケーションへの深い理解を育むこと」。もうひとつは、自分の考えや意見の形成が進み、多様な他者と直接意思疎通できるようになる「自分の考えが磨かれて思考が深まるとともに、人間関係が豊かになること」です。

AI時代に外国語を学ぶ本質的意義について、自らの人生を舵取りし、多様な他者と協働できる資質・能力の育成の観点や、AI技術が今後も予想を超える速さで進歩することを踏まえ、AIに代替されるべきではない、人間が大切にすべき資質・能力の育成の観点から整理し、見方・考え方、目標及び内容などに反映させる。
— 外国語ワーキンググループ取りまとめ(案)p.4「1. 現行の成果・課題を踏まえた改善の方向性③(3)改善の方向性」

反映先として挙げられているのは、見方・考え方、目標、そして内容などです。

本質的意義の再定義AIで手軽に高精度の翻訳言葉・文化・コミュニケーションへの深い理解を育む自分の考えが磨かれ、人間関係が豊かになるこの2つを、見方・考え方/目標/内容に反映させる
AIで訳せる時代に、なぜ学ぶのか。2つの観点に整理し直して、見方・考え方/目標/内容に反映させる。
外国語ワーキンググループ取りまとめ(案)3ページ目「現状の課題」。左の列に、AI時代に外国語を学ぶ本質的意義、語彙や文法事項に関する課題、言語活動に関する課題。右の列に、AIを含むデジタル学習基盤の活用、段階的な指導・校種間接続に関する課題、学校種ごとの課題が並んでいる。

課題が並ぶ1枚。左の列のいちばん上が「AI時代に外国語を学ぶ本質的意義」。小学校の課題は、右の列の「学校種ごとの課題」の中にある。

出典:「外国語ワーキンググループ取りまとめ(案)※会議後修正」(文部科学省・2026年8月4日) https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/108/mext_02389.html (2026年10月7日に利用)

2.授業時間の限界まで、前提に入れる

英語は日本語と比べて文構造や音声の特徴が大きく異なり、日本語話者にとっては習得に相当程度の時間を要する。資料はそう前置きしたうえで、「社会全体の課題」の例を挙げます。日本の英語の授業時間には限界があること。英語を使う機会が少ないこと。自分の意見を言語化することが苦手だということ。

そのうえで、学校教育で対応可能な方策の方向性を示す。そう結ばれています。

社会全体の課題として挙がっているもの(例)授業時間の限界使う機会の少なさ言語化が苦手学校教育で対応可能な方策の方向性を示す
授業時間の限界も、使う機会の少なさも、社会全体の課題として挙げたうえで方策を示す。

3.話題と活動、そして Let's Try! を見直す

「このユニット、何のために伝え合うんだろう」。指導書をめくりながら、そう感じたことはないでしょうか。

外国語活動の教材 Let's Try! は、国が作成して配布しているものです。その教材の一部の単元について、伝え合う目的や必然性のある場面が設定しにくい、という指摘が載っています。

外国語活動教材Let's Try!を以下の観点から見直す ➢ より身近で興味を持ち、楽しく活動できる内容を充実 ➢ 5・6年の外国語科につながるよう、コミュニケーションを行う目的や場面、状況などを意識した活動を児童の発達の段階に応じて段階的に取り扱う
— 同 p.22「補足イメージ⑪ 小学校外国語活動と外国語の接続」

見直されるのは教材だけではありません。児童生徒が外国語を使って伝えたいこと、やってみたいことをイメージできるように、話題や活動そのものを見直す。自分のことや自分の意見、住んでいる地域や国のことを伝え合う機会を増やす。そういう方向が示されています。

いま伝え合う目的や必然性のある場面が置きにくい単元がある次より身近で楽しい内容に5・6年につながる活動へ見直すのは教材だけではない。話題と活動そのものと、伝え合う機会の多さも。
教材の単元だけでなく、話題と活動そのものを見直す。

4.育てたい力から、活動と指導を整理し直す

資料は、学習過程そのものを2つに分け直します。主に「思考力、判断力、表現力等」を育てる「コミュニケーション活動」と、主に「知識及び技能」を育てる「コミュニケーション活動を支える活動」。この2つを、目標の柱書に位置付けます。

資質・能力の育成のために必要な学習過程を「コミュニケーション活動」(主に「思・判・表」を育成する活動)と「コミュニケーション活動を支える活動」(主に「知・技」を育成する活動)に再整理し、目標の柱書に位置付ける。
— 同 p.5「2. 目標及び見方・考え方のあり方(1)目標のあり方」

背景にあるのは、「言語活動」という言葉をめぐる課題です。この語は学習指導要領全体の共通用語になっている一方、外国語における「言語活動」は学習過程の中心に位置し、他教科と比べて位置付けが重い。その語では表しきれない概念になっている、とも指摘されています。解釈にばらつきが見られる、という記述もあります。

いま「言語活動」解釈にばらつき次コミュニケーション活動主に「思・判・表」を育てるコミュニケーション活動を支える活動主に「知・技」を育てるこの2つを、目標の柱書に位置付ける
「言語活動」を2つに分け直し、目標の柱書に置く。

5.国が語彙リストをつくる

「この単語、うちの教科書には出てこない」。研修で紹介された活動が、自分の教科書と噛み合わない。そんな経験はないでしょうか。

資料が課題に挙げているのは、教科書ではありません。指導すべき語彙の選定基準も、具体的なリストも示されてこなかった。そのために教科書ごとに扱う語彙がばらついている、という整理です。

いま国が示しているのは、校種ごとの語彙数の目安だけです。

  • 小学校 600〜700語
  • 中学校 1,600〜1,800語
  • 高等学校 1,800〜2,500語

合計で4,000〜5,000語。大学受験などへの対応で5,000語以上を学ぶ場合もある、と注が付いています。リストはありません。国はこの状態が、「過度な負担」と「重要な語彙の学習が不十分」の両方を生んでいると見ています。

使用頻度の高い重要な語彙や文法等を、様々な場面等で繰り返し扱うことで、(中略)指導の目安とする語彙や、文法の用法を精選・焦点化する。
— 同 p.4「1. 現行の成果・課題を踏まえた改善の方向性③(3)改善の方向性」

では、どう直すのか。国が複数のコーパスなどを参照して「基盤語彙リスト」を作成する。教科書発行者には、そのリストに載っている語を使うよう推奨する。語彙数そのものも、難易度や使用頻度から重要度を見て、精選を含めて見直す。ここまでが、いま示されている方向です。

ただし、新しい語彙数はまだ決まっていません。資料の図では「合計 ●語程度」と、数字が伏せられたままになっています。

「精選・焦点化」は、資料にそのまま出てくる言葉です。図にも「語彙数の精選」とあるので、減る方向もふくみます。研修でも会議でも、この語のまま出てきます。

いま教科書A教科書B教科書C選定基準もリストも無い次教科書A教科書B教科書C精選・焦点化
いまは選定基準もリストも無く、教科書ごとに扱う語彙がばらつく。次は重要なものに絞って繰り返す。

6.第二言語習得の知見を、指導に使う

改善の方向性に、第二言語習得という言葉がそのまま書かれています。

外国語の効果的な学習方法については、日本がEFL環境であるとの考えも踏まえながら、第二言語習得や認知心理学、学習科学の観点から様々な研究が進んできた。これらの科学的知見も踏まえ、授業改善や児童生徒の自己調整学習が促進されるようにする。
— 同 p.4「1. 現行の成果・課題を踏まえた改善の方向性③(3)改善の方向性」

EFL環境とは、資料の注によれば「非英語圏で学ぶ外国語としての英語」のこと。教室を一歩出れば英語を使わない、という状況を指します。ただし資料は、日本がそうだと断定はしていません。「との考えも踏まえながら」という置き方です。そのうえで第二言語習得・認知心理学・学習科学の知見を授業改善に生かしていく、という方針が示されています。

もうひとつ、「自己調整学習」という言葉が入っています。目標のあり方を論じた箇所にも、育みたい態度のひとつとして「自己イメージを持ち、自らを振り返りながら学習を調整する態度」が挙げられています。

踏まえる考えEFL環境教室の外では英語を使わない踏まえる研究第二言語習得認知心理学学習科学授業改善と、児童生徒の「自己調整学習」へ
EFL環境という考えも踏まえて、研究の知見を授業改善と自己調整学習に生かす。

7.学習指導要領に、AIを書き込む

隣のクラスはタブレットで発音を聞かせている。こちらは、何から手をつけるか分からない。端末はあっても、外国語の時間に何に使うかまでは決まっていない。そんな教室はないでしょうか。

資料は、この差に「活用格差」という名前を付けています。AIの活用が学習指導要領等に位置付けられていない。それが学校現場での活用格差を生み、外国語学習の「量」や「質」の差につながる。資料が懸念として挙げているのは、この流れです。原因として置かれているのは、先生ではなく、位置付けがないことのほうです。

デジタル学習基盤の活用を学習指導要領に明記するとともに、その一つとして発達の段階に応じたAIの適切な活用についても明示的に位置付ける。
— 同 p.4「1. 現行の成果・課題を踏まえた改善の方向性③(3)改善の方向性」

ここで言う「デジタル学習基盤」は、AIだけを指す言葉ではありません。土台としてのデジタル環境全体を指し、AIはそのひとつとして名前が挙がっています。

いま(指導要領に位置付けがない)A組使っているB組手つかず活用格差次(明記される)A組明記ありB組明記ありデジタル学習基盤として位置付け
位置付けがないことが「活用格差」を生んでいる、という整理。明記されれば、何に使うかの手がかりが示されることになる。
外国語ワーキンググループ取りまとめ(案)4ページ目「改善の方向性」。本質的意義の再定義、社会全体の課題を踏まえた対応、発信力の強化、語彙・文法の精選・焦点化、第二言語習得等の科学的知見、デジタル学習基盤とAIの明記、資質・能力の構造化が並んでいる。

改善の方向性が並ぶ1枚。この記事の9つは、この11項目と、後ろにある小学校向けの補足ページから拾っている。

出典:「外国語ワーキンググループ取りまとめ(案)※会議後修正」(文部科学省・2026年8月4日) https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/108/mext_02389.html (2026年10月7日に利用)

8.「内容」が学年段階の表になり、学年ごとの目標づくりが任意になる

まず、学習指導要領の書き方そのものが変わります。領域別の目標と資質・能力の関係を整理したうえで、「内容」を学年段階の目安とともに表形式で示し、話題や活動の段階的な高度化をきめ細かく示す。学習指導要領そのものが、そういう形になります。

指導事項が増えるのではないか。その点にも、資料は触れています。指導事項の精選や学年区分の柔軟化が方向性として示されていることを踏まえ、指導事項の増加につながらないよう留意する。学年別に明確に分けるのではなく、「〇学年相当」といった形で、柔軟性を残しつつ目安を示す。そう書かれています。

そしてもうひとつ。いまは各学校に、学年ごとの目標をつくる義務があります。その役割を学習指導要領が担うことになるため、小・中学校の一律の作成義務はなくなります。

学年ごとの目標の一律の作成義務は無くし、各学校の状況や校種間の接続・連携の観点等から必要な場合に、任意で作成する位置付けとする
— 同 p.24「補足イメージ⑬ 小学校・中学校における接続・連携」(3)学年ごとの目標のあり方
いま各学校が、学年ごとの目標をつくる義務がある次学習指導要領が役割を担う学校の作成は任意に「内容」は学年段階の目安つきの表で示される。学年で区切らず「〇学年相当」と幅を持たせる。
学年ごとの目標をつくる役割が、学校から学習指導要領へ移る。

9.小中の「ここまで教える」を具体的に示す

6年生を送り出すとき、中学校が最初に何をするか、すぐに言えるでしょうか。中学校教師への質問調査では、小学校での指導の内容や方法を把握できていない教師が多数、という結果が出ています。

資料はここを「依然として課題」としています。教師が他校種の指導の内容や方法、接続・連携のために重点を置いて指導すべき点を必ずしも理解・意識していない。そのために、段階的な指導も、校種をまたぐ円滑な接続・連携も進んでいない。資料はそう見ています。

各学校段階で身に付けさせるべき事項と、前学校種との学びの接続・連携のために重点を置いて指導すべき事項をより具体的に示す。
— 同 p.4「1. 現行の成果・課題を踏まえた改善の方向性③(3)改善の方向性」

小学校の側に示される留意事項も、具体的に挙がっています。中学校の文法指導につなげるため、日本語と英語の語順の違いなど、文構造への気付きを促すこと。音声と文字の関係に慣れ親しみ、簡単な語句や基本的な表現を読んだり書いたりできるようにすること。この2点です。

文字の扱いも見直されます。ここで名前が挙がるのは、ほかの教科です。国語科のローマ字学習や、総合的な学習の時間に加わる「情報の領域(仮称)」のタイピング。そうした情報活用能力を育てる学習活動と関連づけながら、外国語活動でも文字に慣れ親しむ活動を大切にする。外国語活動から外国語科へ円滑に接続できるよう、初期指導の重要性と留意事項を示す、ともあります。

言葉の範囲にも注意が要ります。改善の方向性で使われているのは「校種間の接続・連携」。小中だけでなく、高校までを含む言い方です。段階付けのイメージ図のほうには「小中連携」という語も出てきますが、こちらは小中にかぎった注記。資料の中でも語がそろっていないので、どちらの話をしているのかは、そのつど確かめる必要があります。

いま小6中1?他校種の指導内容が見えていない次小6中1重点を置いて指導すべき事項を示す
いまは他校種の指導内容が見えていない。次は、重点を置いて指導すべき事項が示される。

まとめ

教室の中の話から、学習指導要領そのものの書き方まで、9つは範囲がずいぶん広いです。それでも共通点はあって、何かを足す改訂ではなく、これまで示されていなかったものを示す改訂、ということになりそうです。

ただし、決まっているのは方向まで。実施時期は、この資料には書かれていません。図や表のあちこちに添えられた「告示や解説を示すにあたり引き続き検討」の文字どおり、続報が待たれます。

出典

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