小学校で英語を教える先生の英語力は、以前から課題として挙げられてきました。しかし、小学校の先生にどれくらいの英語力が求められているのか、国は水準を示していません。
【教員の英語力・指導力】に関する不安は,20年前の小学校英語導入期から問題視されていたものであり,従来から変わっていない不安である。
一方、英語専科指導加配の資格要件には、CEFR B2(英検準1級)相当以上という線が置かれています。4つの条件のうちの1つで、学級担任に課されたものではありません。
では、実際の現場はどうなっているのか。文部科学省が全国の公立小学校18,560校に行った「令和5年度 英語教育実施状況調査」から、小学校の部を紹介します。調査基準日は令和5年12月1日。平成25年度から続いている調査で、小学校が答えたのは、この年が最後です。
1.誰が教えているか:5・6年でも、担当の6割近くは学級担任
第5・6学年の英語を担当する教師は、延べ80,478人。学級担任が38,064人、同学年の他学級や他学年の担任が授業交換で8,397人、専科教師等が20,799人です。残りは、他の小学校から6,906人、中学校・高等学校から1,825人、非常勤講師が4,075人、特別非常勤講師が412人。
学級担任と授業交換を足すと46,461人。延べ80,478人のうち57.7%です。
第3・4学年は、延べ82,997人のうち学級担任が50,375人。専科教師等は16,620人です。5・6年より、担任の割合が高くなります。
2.先生の英語力:B2相当が出てくるのは専科の加配。学級担任には水準が無い
小学校に所属する教師349,240人のうち、英語免許状を持っているのは25,040人で7.2%(中学校・高等学校の臨時免許状と特別免許状を含む)。英語の授業を実際に担当している85,847人で見ると、CEFR B2(英検準1級など)相当以上を取得しているのは3,683人、4.3%です。
この調査が数えているのは、外部試験を受けて結果を持っているかどうかです。英語が使えるかどうかではありません。
その2年後、2026年6月18日に公表された令和7年度の調査では、中学校の英語担当教師が58.5%、高等学校が84.4%。中学校は、はじめて目標の50%を超えました。
(参考)第2期教育振興基本計画では、英検準1級程度以上(CEFR B2レベル以上)を取得した英語担当教師の割合について、中学校は50%以上、高等学校は75%以上を目標としていた。
この引用が載っている節の題は「英語担当教師の英語力(中学校・高等学校)」。小学校の数字は、概要には出てこず、集計結果の表にだけ載っています。
小学校の全科の免許で、外国語科は教えられます。B2相当という線が出てくるのは、英語専科指導加配の資格要件のほうです。
以下のいずれに該当する者であること。① 中学校又は高等学校教諭の英語教員免許状を有する者 ② 2年以上の外国語指導助手(ALT)の経験者 ③ CEFR B2相当以上の英語力を有する者 ④ 海外大学、又は青年海外協力隊若しくは在外教育施設等で、2年以上英語を使用した海外留学・勤務経験のある者
その要件が現場でどう働いているかは、島根県が国に緩和を提案した資料に数字が出ています。県内の小学校採用の教諭1,920人のうち、①の中・高の英語免許を持つのは160人で8.3%。②〜④に当てはまったのは、1,760人のうち1人でした。配置できたのは19市町村のうち8市1町、24校です。
資格要件として、中学校・高等学校の免許状保有者であることや海外大学等での2年以上の留学経験等があることなどが求められているが、これらの要件を満たす者は限られており(特に中山間地域・離島)、配置に当たって困難が生じている。
4.3%は、専科として配置されるための線を、担任も含めた全体に当てて数えた数字です。
3.ALT:発音のモデルは15,585校、児童を見取る仕事は半分ほど
小学校に参画しているALT等は、全国で11,851人。JETプログラムが2,616人、自治体が独自に直接任用しているのが2,735人、派遣契約が4,048人、請負契約が334人。補習等のための指導員等派遣事業が687人、学校独自に協力を得ている日本人が769人、外国人が662人です。
何をしているかも聞いています。多いのは、発音のモデルと、やり取りの相手。少ないのは、パフォーマンステストの補助と、児童の発言や作文へのコメントでした。
4.評価:CAN-DOリストの設定は84%、公表は58%
「CAN-DOリスト」形式の学習到達目標を設定しているのは15,674校。18,560校のうち84%です。そのうち児童や保護者に公表しているのは10,797校、達成状況を把握しているのは13,898校。
第6学年のパフォーマンステストは、話すこと[やり取り]が69,453回、話すこと[発表]が80,586回。合計150,039回です(実施予定を含む、児童全員を対象とした回数)。
5.ICT:端末は使われている。外とやり取りする活動は9割が実施していない
児童が1人1台端末を活用した授業を「実施していない」と答えたのは667校。18,560校のうち3.6%です。
いっぽう、学校の外とつながる活動は数字が変わります。児童が電子メールやSNS、チャットを用いたやり取りをする活動は、16,722校が実施していない。18,560校の90%です。遠隔地の児童等と英語で話をして交流する活動は16,170校、遠隔地の教師やALT等とのティーム・ティーチングは17,267校が実施していません。
まとめ
5・6年の英語は、6割近くを学級担任が担当しています。ALTは発音のモデルには入りますが、児童を見取る場面では半分ほど。到達目標は8割以上の学校が立て、公表はその7割。端末は行きわたっているものの、外とやり取りする活動はほとんど行われていません。4.3%は、この形を一つの物差しで測った数字です。
ただし、4.3%と中学校の58.5%は、測っている相手が違います。中学校で英語を教えるには英語の免許が要りますが、小学校の学級担任には要りません。
いっぽう、小学校の学級担任に英語力が求められていない、ということでもありません。10月5日の審議まとめは、国が全国の教師等に向けた大規模なオンライン研修を実施するとし、その目的に「英語力・指導力の向上」を挙げています。
今回の改訂において重視している点が教師等に一層伝わり、英語力・指導力の向上や継続的な授業改善が図られるよう、文部科学省において全国の教師等に向けた大規模なオンライン研修を実施する。
小学校向けは、学級担任と専科教員それぞれのニーズに応じたものになるよう十分に配慮する、ともあります。
それでも、1つ残ります。中学校と高等学校には目標があり、毎年測られ、令和7年度に中学校が目標を超えました。小学校には目標が無く、令和6年度からは測られてもいません。小学校の英語について国が持っている全国の数字は、調査基準日が2023年12月1日のものが最後です。




